医者をめざす君へ―心臓に障害をもつ中学生からのメッセージ

試験日の朝、新聞に「理想の医師像志す弟へ」と題された記事が掲載れていました。試験の面接で「最近読んだ本は?」という質問には答えられないけどすぐに本を取り寄せることにしました。

本を出版したのは14歳の山田倫太郎くん。生まれつき心臓に重い障害を抱える長野県の中学生です。倫太郎くんには、保育園の弟恵次郎くんがおり母親から「将来医師になってお兄ちゃんを助けたい」と弟が言っていたことを聞かされます。この本は、「医師を目指す保育園の弟」のためだけに書き上げた1冊です。だから素直で言葉で心に響くものばかりでした。

医師を目指す

障害を持つ本人とその家族には、上辺だけの医療からは見えない現実の生活や葛藤があります。「医師は患者さんの病気だけを診ていればよいのではない。生活全体を診て接しよう」という言葉には、当事者だからこそ伝えたい気持ちにあふれているのです。

とくに心に響いたのは、「入院している患者さんにも自分の生活がある。だから検査や治療はできるかぎり患者さんの生活に合わせてやるべきだと思う」ということば。医療の現場で患者をささえる(医師、看護師、薬剤師、栄養士、調理師など)すべての人には「都合」があります。でも患者一人一人にも色々な思いがあります。もちろん患者は1人ではないので、すべてを患者に合わせるわけにはいかなけれど可能な限り寄り添うことができたら・・と思いました。

長時間の手術で家族に「大丈夫」と伝えたこと。これも病気の治療や手術で不安になっているのは、患者本人なんだけど、家族も同じように心配や不安を抱えているのです。そのときに医師や看護師が正しく状況を伝えてくれたらどんなに安堵できるかわかりません。面白いと思った部分は、ダイスキな親子丼が朝食に出るのを楽しみにしていた倫太郎くんが、検査で呼ばれて食べられなかったエピソードです。

底抜けに明るい倫太郎くん、中学生らしい素直な言葉で綴られており、この本の1番の読者である弟に伝えたい気持ちがあふれています。小さい子でも読めるように漢字にるびがふってあり読みやすい内容で患者本人や家族の気持ちをくみとる大切さなどがわかりやすい言葉で書いてあります。

24時間テレビで紹介された倫太郎くんの明るく茶目っ気たっぷりな1冊は、2015年8月に出版されたばかりですが、倫太郎くんと同じ中学生や重い病気で子供を亡くした親、難病の子供のお世話をしている親からの反響も多いそうです。医師を目指すというタイトルですが、福祉や看護師、医療系に進むのであれば「医者をめざす君へ―心臓に障害をもつ中学生からのメッセージ 」は読んでおきたい1冊です

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